NY流セルフプロデュース力

“I can’t believe you don’t care about your appearance!!!”
 見た目を気にしないなんて、信じられない

NYのような大都会に住んでいると、毎日が 慌ただしく過ぎていく。
あれもしなきゃ、これもしなきゃ!
------でも、時間が足りない 。

ある日、ドライヤーを使う時間さえ惜しくなり、髪をバッサリ切ることにした。
「最近、仕事と学業に追われて。 髪をケアする時間がなければ、ちゃんと鏡を見ることもなくなってるの」とつぶやく私に、「信じられない! ビジネスの場でナメられたくなかったら、外見を整えなさい。この街では、自分をブランディングすることが何より重要なのよ。もう…彼氏も同僚も何も言わないのかしら?」 人気ヘアサロンに勤めるトップスタイリスト、クリスが驚くようにこう言った。

仕事の腕前はもちろん、彼の美学やこだわりは、外見にもよく表れている。
ビシッと整えられた髪、鍛えられた体に程よくフィットした服、ストールの巻き方、清潔感のある爪、歩き方。フレンドリーな笑顔やウィットに富んだトークとは裏腹に、時折それは緊張する位でもあるけれど、ブラシやスプレーを魔法使いのように扱うパフォーマンスと相まって、思わず見入ってしまう。
「ニューヨークの第一線で活躍しているビジネスマン達は、“今日大事な、ミーティングがあるからセットして”って来るくらいなのよ」

以前のコラムでもお伝えしたかもしれないが、‘ニューヨーカー=お洒落’の方程式は成立しない。服装に気を遣う人は約4%、スーツを素敵に着こなす人はほんの1%程度しかいない。その1%は、99.9%の確率で、周りが認める‘仕事がデキる男達’。要は真のビジネスマンというわけだ。

ボタンを閉じても変なシワひとつ寄らない 、完璧に仕立てられたスーツ。素材の上質さが際立つシンプルなジャケットに、茶目っ気のある小物を1点プラスしている。それは、 ネイビーの靴下の指先だけに配された赤いラインだったり、銃モチーフやターコイズをあしらったカフリンクスだったり、茶目っ気のあるカエル柄のチーフだったり。近寄らないとわからない位さり気ないアクセント。

取引先に会わない日は、スーツの上から深みのあるグリーンのダウンベストを重ねたり、ナイロンのバックパックを持ったり、エナメルの白スニーカーを履いたり、思いっきりハズす日もある。

もしかしたら、日本でスーツスタイルに力を入れていると、周りから浮かないかとか、ナルシストに思われないか、と気にする人もいるかもしれない。

でも、もしそれが社内イチ、仕事のできる男だったとしたら…?
清潔感もちゃんとキープできていたら…?
みんなを納得させるほどの抜群の企画力があったとしたら…?
ユーモアを感じさせるトーク力を備えている人だったら…?
周りをホッと和ませる笑顔も兼ね備えていたら…?

そんなことを考えたあの日から、毎日身だしなみを気遣うようになった。
彼にカットしてもらった髪に似合うように。

PROFILEプロフィール

横山理恵 ー Rie Yokoyamaファッションエディター

大学卒業後、アパレル会社に就職。その後、ヨーロッパの歳を重ねるほどにカッコよさを増していく大人たちに憧れ、ファッション誌編集者を志す。NIKITA編集部勤務後、フリーランスエディターに。雑誌Domani、VERY、LEONの他、ファッションカタログに携わり、現在、ニューヨークに留学中。FIT(N Y州立ファッション工科大学)にて、ファッションビジネス、ハットデザインを学ぶ。女性誌Domani(小学館)にて『meは何しにN.Y.へ?』連載中。

横山理恵

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