夏のグルカと男の品格

 夏、まっさかり。ギンギン照りつける太陽と足もとからモワッと立ちのぼってくるアスファルトの熱気。素肌にまとわりつく潤いあふれる空気が街ゆくふたりの距離をちょっと遠ざける、そんな日本の夏。もう、とにかく「暑い!」と言い放ってしまいたくなりますが、こんな暑さにもイライラせずに、いかに涼しげに気持ちよく楽しむかが素敵な大人の夏の過ごし方ですね。先日、もの腰やわらかな大人の男性とランチをご一緒する機会がありました。テラス席に気持ちいい潮風が吹くイタリアンのお店です。その日の彼の装いは淡いブルーの麻のカプリシャツに、オフホワイトのコットンパンツ、足もとはクロコダイル革が使われたベージュ色のグルカサンダル。シンプルながらも品のある涼しげなコーディネートはとても爽やかで、ちょっと惚れてしまいそうになったのは言うまでもありません。冷えた白のハウスワインを美味しそうに飲みほす彼の姿を見つめながら「あら、ここは地中海だったかしら」と錯覚してしまうような”伊国情緒”あふれるひととき。ふたりの時間を存分に楽しむためにも、やはり季節や場所にあわせた装いを意識することは欠かせませんね。それだけで、充実した気分になれます。

 実はわたくし、男性の”グルカサンダル”を愛してやみません。グルカサンダルを履いている男性はそれだけでもう好印象です。もともと、グルカサンダルはイギリスのインド統治時代にネパールのイギリス傭兵部隊だったグルカ兵が履いていた軍靴でした。今では男性もさることながら、女性や赤ちゃんのサンダルとしても人気です。(最近、わたくしもオーダーしました)しかし、街ゆく人びとをながめてみても、残念なことにグルカサンダルを履いている男性はほとんど見かけません。グルカサンダルこそ大人の男性に履いてほしい色気あるサンダルなのに、皆さん、なんて惜しいことをしているのでしょう・・・。サンダルとはいっても、グルカサンダルはドレスシューズとサンダルの中間的な存在。足の甲まで適度に覆われているため肌の露出が控えめで、カジュアルすぎないのがいいところです。ビーチサンダルのようなデザインのサンダルは、やはり足の露出が多すぎてエレガントさに欠けてしまいます。男性の足は指や甲に毛が生えていることが多く、隠さずにひと言で申しあげると”美しくない”のです。それをちょうどいい具合に隠してくれる。でも、ちょっと肌が見える。ここに色気を感じてしまいます。おそらく、エレガントに夏の装いを楽しめるサンダルはグルカサンダルだけといっても言いすぎではないでしょう。

 こんな季節にはどうしても肌の露出が増えてしまいますが、男性の場合は肌とあわせて体毛も露出してしまいますのでちょっと困りものです。一般的にオフィシャルの場で体毛を見せることは失礼にあたるのが装いのルール。男性がドレススタイルでホーズを履くのも、肌やすね毛を見せないためです。肌を見せるのはカジュアルな場に限りますが、あまりに露出しすぎても品がありません。もちろん体毛の濃さは個人差がありますし、リゾートなどでは露出度も上がることでしょう。ただ、最近では素肌の露出についてTPOの意識が低くなっているように感じるのです。実際に、ハーフパンツとビーチサンダルのスタイルでどこにでも行ってしまう男性がとても多い気がします。また、日本の女性は残念ながら男性の(濃い)体毛があまり好みではありません。わたくしもそのうちの一人です。以前、男性の”おひげ”のことを書かせていただきましたが、それと同じで男性の体毛はどこか清潔感に欠けるイメージがあります。ドレスコード指定のないところでも、できればちょっとラグジュアリーなお食事やお酒の席では隠していただけたらうれしいのが本音です。(特にすね毛。すね毛を隠して・・・。)何度もお伝えしていますが、装いは相手への気づかい。女性は意外と細かくチェックしています。それも、大体は”減点方式”です・・・。暑がりな男性の皆さま、くれぐれも夏のデートの装いにはお気をつけくださいね。

PROFILEプロフィール

中里 彩 ー Aya Nakazatoテーラーアプレンティス

1992年生まれ。エジプト考古学者を志して、大学では考古学を専攻。一方で、メンズのテーラード服に惚れこみ、在学中から熟練の職人の元でテーラリングを学ぶ。卒業後は、ファッション業界に限らず、複数の事業を展開。縮小していく職人の手仕事を支えたいという強い思いから、現在ブランド・プロダクトのプロデュースを準備中。ファッションスタイリング、執筆活動なども開始。
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中里彩

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