ウエストヴィレッジの男たち

ニューヨークはエリアによって集まる人がガラリと変わる。 アッパーイーストにはアッパーイーストの、ハーレムにはハーレムの、そしてウェストヴィレッジにはウェストヴィレッジならではの独特の空気が流れている。 マンハッタンの16丁目以下西側のダウンタウンに位置するウエストヴィレッジ。ここは、老舗のジャズバーや古いインディペンデント系の映画館、キュートなカフェが佇む、のどかなエリア。マンハッタンの高層ビル群からかけ離れ、緑が多く、閑静なブラウンストーンのタウンハウスが並んでいる。 地元の人で賑わうこじんまりとしたワインバーや、キッチュな雑貨店やヴィンテージショップ、さらには老舗ブランドのブティックもどこかアットホームな雰囲気で、ぶらぶらと歩いているだけで思わず楽しくなってしまう。

この気取らない街のように、ウェストヴィレッジに住む男たちは、暮らしぶりも、ファッションも、どこか自由な雰囲気。例えば、アッパーイーストの男が、クラシカルなスーツスタイルを好むのに対し、ウエストヴィレッジの男は、スーツをボヘミアンな感じで着こなしたりする。ミニマムなフランネルのグレースーツにオフワイトのざっくりニット帽を合わせたり、一見ベーシックなスーツ姿かと思いきや、中にグレンチェックのジレを重ねたり、真っ白なレザースニーカーでハズしたり。どこか遊びが効いていて、カッコいい!

そんな自由気ままなスタイルを好む彼ら、アーティスティックなギャラリー巡りやジャズバー・ホッピングが週末のお決まり。ウェストヴィレッジは、何よりジャズバーのメッカとして知られる。Smalls、Village Vanguard、Blue Note...老舗の名店は、このエリアに集中している。(ちなみに、ニューヨークのジャズバー(特にこのエリアの!)は、地下にあったり、古びた木の椅子やベンチがざっくばらんに置いてあったりして、日本のそれより気取らない雰囲気。こじんまりとしていて30人くらいがぎゅうぎゅうに詰めあっていたりする。そのお店のつくりが地元の熱気を感じるのにちょうど良い!)

とある土曜の夜、女友達とウエストヴィレッジにある老舗のジャズバーを訪れた。私たちの前の席には、ツイードのジャケットにデニムシャツを着たお洒落な男がひとりで座っていた。「このピアニスト、感情を揺さぶられるようなパワーがあるんだ」演奏が始まる前から大興奮の彼。聞けば、どうやら昨日も来ていたらしい。しかも明日の予約もしてあるそうで、そうなると3日連チャンで同じピアニストの演奏を聞くということに! “えぇ…、そんなの飽きちゃいそうじゃない…?”その話を聞いたとき、とても驚いたのだけど、彼曰く「同じピアニストの演奏でも、日によってプログラムが違く、ムードも全然異なるから、来る価値アリ」とのこと。

なるほど、こののめり込む感じ、ニューヨークっぽい。では、お気に入りのアーティストを見つけたら、次回にぜひ試させていただきます!

どこかに遊びを効かせたファッションと、肩の力が抜けた生き方。そして好きなことには、邁進する情熱とこだわり。そんなウェストヴィレッジの男たちから、ニューヨークの楽しみを教わり、ほろ酔いになった夜でした。

PROFILEプロフィール

横山理恵 ー Rie Yokoyamaファッションエディター

大学卒業後、アパレル会社に就職。その後、ヨーロッパの歳を重ねるほどにカッコよさを増していく大人たちに憧れ、ファッション誌編集者を志す。NIKITA編集部勤務後、フリーランスエディターに。雑誌Domani、VERY、LEONの他、ファッションカタログに携わり、現在、ニューヨークに留学中。FIT(N Y州立ファッション工科大学)にて、ファッションビジネス、ハットデザインを学ぶ。女性誌Domani(小学館)にて『meは何しにN.Y.へ?』連載中。

横山理恵

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