粋なオトコの溜まり場 〜スピークイージー編〜

Speakeasy”という言葉を耳にしたことがあるだろうか。

語源はそのまま、Speak(話す)+ Easy(こっそりと)=ひそひそ注文する。
時は遡り、1920年代。禁酒法の取り締まりから逃れながら、ひっそりと営業していた“もぐり酒場”のことを指す。秘密の暗号を伝え、隠し扉から入る仕組み。酒を飲んでいることがバレないよう、ティーカップを使用する店も多かったという。

そんな“隠れ家的な”とか“知る人ぞ知る”という形容詞が似合うSpeakeasyが、ニューヨークには多数存在する。Bathtub Gin、 Apotheke、 PDT、 Beauty & Essex、 The Back Room、 Angel’s Share、 Attaboy、 Fig 19などなど。数えれば、キリがない。

何の建物かわからない、妖しげな外観。そのひっそり感とは裏腹に、一歩足を踏み入れると、中は異様な熱気でムンムン。初めて訪れたとき、なんだか悪いことをしているような、不思議なドキドキ感があったのを今でも覚えている。それと同時に、観光客ではなく、小粋なニューヨーカーたちの遊び場を発見した喜びもあった。

まずは、チェルシーの“B”。エスプレッソが美味しい小さなコーヒースタンドの奥には隠し扉があり、バーへと続いている。淫靡な赤い照明、禁酒法時代の新聞や写真、そしてバスタブ(当時、自宅のバスタブでジンをつくる若者が多く、これが店名の由来になっている)。日によって、突如生演奏やバーレスクショーが始まるのだが、そのときの盛り上がりといったら!

続いて、イーストヴィレッジにある“P”。ここはSpeakeasyと言えば、真っ先に名前があがる人気店。ホットドック屋の一角にある古びた電話ボックスから電話をする仕組みも面白い。薄暗い照明の中でいただく、スパイスの効いたカクテル達が、まったりとした刺激を誘ってくれる。

そこから歩いて数分の“A”。大衆居酒屋の奥にあるこのバーは、荘厳な天使の絵画が印象的。紫蘇や柚子、抹茶等の日本特有の食材を使用したカクテルは、ニューヨークイチとの噂。感動のカクテルはもちろんのこと、思わずNYにいることを忘れてしまうホスピタリティにも癒されてしまう。

ちなみに、カクテルは、禁酒法のおかげで発展したと言われている。違法でつくっていた粗悪な酒をいかに美味しく感じさせるかが当時は重要だった。

そして近年注目を浴びている、ハーブや新鮮なフルーツで作るミクソロジーカクテルを楽しめるSpeakeasyも登場した。それが、チャイナタウンの“A”。路地裏の雑居ビルをくぐると、老舗の薬局をイメージしたお洒落な空間が広がっている。メニューは“Pain Killers(痛み止め)”等の処方箋。ケールや枝豆、レモンやシナモン、ローズマリーなどを使用した変わり種カクテルが、目にも楽しい。

男性は、女性に比べ“店の浮気”をしない生き物だと思う。
一度馴染みの店を見つけたら、一途に愛する傾向が強い。それはそれで愛おしいことだけど、残念ながら、女性はその逆。Speakeasyで見かけたニューヨーカーのように、ちょっとした冒険を楽しめる男性は、それが自ずと“遊びを知っている感”や“ドキドキを感じさせる”雰囲気につながるのではないかと思う。

ニューヨークを訪れたら、ぜひともお気に入りのSpeakeasyを見つけてほしい。

PROFILEプロフィール

横山理恵 ー Rie Yokoyamaファッションエディター

大学卒業後、アパレル会社に就職。その後、ヨーロッパの歳を重ねるほどにカッコよさを増していく大人たちに憧れ、ファッション誌編集者を志す。NIKITA編集部勤務後、フリーランスエディターに。雑誌Domani、VERY、LEONの他、ファッションカタログに携わり、現在、ニューヨークに留学中。FIT(N Y州立ファッション工科大学)にて、ファッションビジネス、ハットデザインを学ぶ。女性誌Domani(小学館)にて『meは何しにN.Y.へ?』連載中。

横山理恵

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