ニューヨークに住み始めてもうすぐ2年半が経つ。 最近ようやく、アメリカのよいところ、日本のよいところ、それぞれを客観的に見られるようになってきた。

ずっと感じていた疑問の一つに、ニューヨーカーって、なぜだかカッコいい。この“なぜだか”が何故なのか、ずっと知りたくてしょうがなかった。シンプルなTシャツでも、ALLブラックのワントーンでも、なぜだかカッコよく見える。
そして、その答えを最近、見つけた。

実は、旅行で訪れていたときは、ニューヨーカーは個人主義で冷たいと思っていた。でも住み始めて、それが180度変わったのだ。世界の中心都市に多くの才能が集まる分、彼らはいつも忙しそうだし、他人をそこまで気にしていないのも事実(他人がどうでもいいのではなく、人からどう見られているかを気にしていないという意味で)。多文化で育った人を受け入れ、個人の考えを尊重し、そして何より、困っている人を見かけたら、いつでも助けてくれる“懐の広さ”がある。

今、メンズブランドSIMPLE LIFEのサイトで、NY街角スナップ連載をやらせていただいているのだけど、この撮影中、幾度となく“ニューヨーカーの懐の広さ”に助けられた。

先日、ホテルのラウンジでお洒落なニューヨーカーを探していた時に出会ったToddは、明らかに、仕事の打ち合わせ中だった。終わるまで待っていようと、近くのソファに座っていたのだが、一向に終わる気配がない。だんだんと日が暮れてきた。光がなくなると、写真が撮れなくなる。

思い切って、声を掛けた。どうやら彼は、クライアントとの打ち合わせだったらしく、その場に居合わせた誰もが、一瞬、打ち合わせに急に入り込んできた人間に驚いて目を丸くした。“あちゃー、やっちゃったか。。。”すると彼は「僕トイレに行きたいから、10分休憩しません? その間に、撮影をしてきます。僕もフリーランスで仕事をしているから、彼女の気持ちがわかるんです」と言ってくれた。

しかも帰り際に、クライアント側にもお礼を伝えると、全員が「頑張ってね!」「アリガトゴザイマス」と温かい笑顔で見送ってくれたのだ。以前のSNAPで出会ったMaxも、Edwardも、Stuartも、みんなそう。撮影に興味があるわけでもないのに、快く助けてくれた。 こういう優しさに触れるにつれ、以前の自分が、いかに小さな人間だったのか、反省するきっかけにもなった。

FITの授業中、必要な道具を持ってこない生徒が何人かいて、いつもあれ貸して、これちょうだいと言ってくる。ハサミを貸したら、錆びて戻ってきたときは悲しい気持ちになったりもした。小学生の頃、連絡帳に忘れ物をしないようメモ書きしてきた私は、“忘れ物をする=いけないこと”だと思っていたし、学生であろうと、プロフェッショナルでいることは大事だと思うから、他人から道具を借りたくないという思いもあった。

でもニューヨークの人たちは、困っている人がいると「これ使って」と自ら差し伸べているのだ。その懐の広さと優しさが、“なぜだか”カッコいいの秘密だと気づいた。ファッションもそう、ガチガチに完璧なのではなく、むしろ、いい意味で力が抜けている。そして誰かのために行動する、その心の余裕が佇まいに表れている。

私も、誰かが困っている時に自らすっと手を差し伸べられる、そんなニューヨーカーのようになりたいと思った。

PROFILEプロフィール

横山理恵 ー Rie Yokoyamaファッションエディター

大学卒業後、アパレル会社に就職。その後、ヨーロッパの歳を重ねるほどにカッコよさを増していく大人たちに憧れ、ファッション誌編集者を志す。NIKITA編集部勤務後、フリーランスエディターに。雑誌Domani、VERY、LEONの他、ファッションカタログに携わり、現在、ニューヨークに留学中。FIT(N Y州立ファッション工科大学)にて、ファッションビジネス、ハットデザインを学ぶ。女性誌Domani(小学館)にて『meは何しにN.Y.へ?』連載中。

横山理恵

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