もっと優雅に、なめらかに<br>世界随一の高級裏地、ベンベルグ®

Vol.26 旭化成  PHOTO:SEIJI SAWADA , TEXT:YURIKO KISHI


4月26日、東京・丸の内の商業施設「KITTE(キッテ)」2Fに、ダーバン初の直営店がオープンした。その誕生を記念して、オープン初日から二日間にわたって開催された「PRODUCT MAKES MAN-本気のプロダクトが本物の男を創る-」は、本気のプロダクトやサービスを手掛ける企業との異業種コラボレーションによって実現した「男を上げる」体験型イベント。今回紹介するのは、90年を超える歴史を誇る総合化学メーカー、旭化成株式会社(以下、旭化成)。ダーバンスーツの上質な着心地や美しいシルエットは、同社が開発する高級裏地「ベンベルグ®」があってこそ実現する。その魅力とこだわりについて、余すことなく話を伺った。

01.世界にたったひとつの“キュプラ”ブランド


気品あふれる光沢感、なめらかな肌触り――美しさと機能性を兼ね備えた高級裏地として知られるベンベルグ。もとを辿れば、この名は、コットンから生まれた高純度の再生セルロース繊維“キュプラ”に付けられたブランドネーム。つまり、ベンベルグとは、すなわちキュプラを意味している。原料は、綿花の種子を包む「コットンリンター」と呼ばれるうぶ毛。旭化成は、全体の約3%しか取れず、通常は繊維として使われないこの部分を独自の技術で精製・溶解し、ピュアな再生繊維として生まれ変わらせている。土に還る「生分解性」も備えた、地球環境に優しい天然由来のエコロジー素材だ。

ベンベルグの発祥は、19世紀後半にさかのぼる。ドイツのJ.Pベンベルグ社が新しい紡糸法を採用し、工業化に成功。旭化成は、1928年にその製造技術を導入し、3年間に及ぶ研究の末、ついに日本での生産を初めて結実させた。1931年、豊かな自然に恵まれた宮崎県延岡市に独自のベンベルグ工場を創設し、85年以上にわたって生産を続けながら、さらなる品質向上と用途の拡大を目指して、たゆまぬ研究と技術革新に尽力してきた。今や、世界で唯一のキュプラ“ベンベルグ”メーカーとして、不動の地位を築いている。言い換えれば、現在日本のみならず、世界各地に流通しているキュプラはすべて、旭化成のベンベルグであるということ。

02.袖を通せばすぐに分かる、卓越したクオリティ


今回のコラボレーションイベント「PRODUCT MAKES MAN-本気のプロダクトが本物の男を創る-」では、前述したベンベルグの主原料の紹介をはじめ、接触冷感などの機能性や、ベンベルグ裏地とポリエステル裏地を使用したジャケットの着用比較など、ベンベルグの魅力を肌で体感できるさまざまな展示が披露された。

ベンベルグ裏地の主な特長は4つある。一つ目は、優れた吸放湿性。スーツやジャケットなど、衣類の内側にこもる湿気を素早く吸い取り、ムレやベタつきを抑え、さわやかな着心地を実現する。イベントブースでは、2つの円柱デモ機の中に、短冊状に切ったジャケット一着分相当の裏地を吊るし、夏場を想定した湿度約80%の状態を再現。ベンベルグ裏地(上記写真左側)がしっかり吸湿しているのに対し、ポリエステル裏地はほとんど吸湿していないことが見て取れるだろう。

二つ目は、制電性に優れていること。ベンベルグ裏地は、静電気を空気中へ素早く逃し、まとわりつきを防ぐだけでなく、表地側の静電気も逃がすので、ほこりや花粉などからも大切な衣類を守ってくれる。三つ目は、体の動きをスムーズにするすべり性。ブースで試着してみると、ポリエステル裏地のジャケットに比べて、ベンベルグ裏地のジャケットは、着脱時のすべりが格段になめらかだった。摩擦が小さいので、腕を動かした時などに、すべりの良さがより実感できる。四つ目は、発色の良さ。染色性に優れたベンベルグは、鮮やかで深みのある色合いを出しやすく、昨今、インド女性が着用するサリーなど、華やかな色合いが求められる民族衣装での需要が極めて高いそうだ。

03.ダーバンと共に進化する“メイド・イン・ジャパン”


ベンベルグとダーバンの出会いは、ダーバンがデビューした1970年ごろのこと。以来、ダーバンスーツには、その美しい裏地が使用されている。メイド・イン・ジャパンのものづくりこだわる者同士、引き合うように手を取り合い、長い年月を共に歩んできたといっても過言ではない。

「素材への強いこだわりを持つダーバンは、裏地にも透徹したビジョンをお持ちです。例えば、通常、別注というとブランドロゴをジャガード織りで入れるケースが多いのですが、「MONSOON®」の裏地は、無地でありながら、夏場の快適性を究極に追求するために、吸湿性をさらに向上させるなどの趣向を凝らしました。無地でありながら別注を立てるというのは、現在でも非常に珍しい例です。また、裏地については、製品開発の最終段階で決めるアパレル様が多い一方、ダーバンの場合は、かなり早い段階から、開発コンセプトを共有させていただいております。明確な要求のもと、より製品に合う裏地を実現するために、これまで共同開発という形で携わらせていただきました」と話すのは、旭化成繊維事業本部の角田隆行氏。

繊維製品品質管理士でもある角田氏は、こう続ける。「通常、スーツのパンツのひざ裏に使う裏地は、真っ先にコストダウンの対象になり安価なポリエステル素材となるケースが多いのですが、ダーバンスーツは全商品において、ひざ裏にもベンベルグをご使用いただいています。表からは見えませんが、特に夏場は汗をかくと突っ張りやすく気になる部分です。そういったところにまで細やかな配慮がなされていることも、特筆すべき点だと思います」

裏地の新製品が出来上がると、ダーバン製品に使用するか否かにかかわらず、ダーバン宮崎ソーイングの「職人」たちに、可縫性を評価してもらうこともある。こうした技術的な面での交流で得た情報は、さらなる開発に繋げられていく。

今回のイベントで旭化成が掲げたテーマは、「違いの分かる男」。これが何を意味するかは、もうお分かりだろう。次にダーバンスーツを手に取った時、裏地に触れて、感じてみて欲しい。
※「ベンベルグ®」は旭化成株式会社の登録商標です。


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