受動から能動へ 現代のテーラードについて

Vol.04 松本知彦 TOMOHIKO MATSUMOTO 株式会社dig代表・クリエイティブディレクター PHOTO:KEITA NAKADA(LOKI)、TEXT:HIROMI HARA


スペシャルインタビュー第二弾は、デザインやプランニングを通して、企業の魅力作りを行うクリエイティブカンパニー『dig-ディグ』の代表・松本知彦氏。今回は自身も出演する写真集『JAPANESE DANDY-ジャパニーズダンディ』のプロデューサー・河合正人氏との対談が実現。テーラードスタイルについて、大いに語ってもらった。

01.日本は“何でもあり”だからおもしろい。


ー スーツ選びで気を付けていることはありますか?

松本 スーツやジャケットは、フィッティングがキモですよね。値段ではないと思います。

河合 フィッティングは大事ですね。見た目も着やすさも含めてね。タイトすぎやユルすぎはNG。とくにジャケットは腕が自由に動くことが大切だと思いますね。腕が吊ると食事のときに辛いですし、結局着なくなってしまうんですよ。

松本 わかります。3ピースでブレイシーズをしているとトイレに行くのも大変ですし、ヘビーウェイトのスーツを着て食事をする際も苦労しますよね(笑)。
※ブレイシーズ:英国ではサスペンダーのことをブレイシーズという。

ー やはりロマンを求めると大変なんですね(笑)。

河合 とはいえ昔のアイビーのまんまでは、今の時代だとコスプレのように見えてしまいます(笑)。やはり時代に合ったものを多少入れていかないと奇異に映りますよね。トラディショナルは不変だといいますが、意味合いが少し違うんです。スピリッツは不変かもしれないですけど、時代によって洋服は変わりますから。

松本 ひとつのジャンルだけで固めると、どうしてもガチガチのコスプレのような格好になってしまいますからね(笑)。そういう意味では、日本って何でもあるからおもしろいですよね。イタリアクラシコもフレンチトラッドもメイドインジャパンも何でもあり! いろんな要素を気分でミックスして楽しむことができますよね。

河合 だから「ジャパニーズダンディ」みたいな本が出てくるんだと思いますよ。日本人には、日本人ならではのバランスがありますから。僕らが英国貴族のような格好をしても所詮は庶民であって、そこを逆手にとって日本的な解釈で楽しめばいいんですよね。たしかに英国の老紳士は格好いいですけど、日本人は少し肩の力が抜けているくらいの方が格好いい。がんばってないくらいがちょうどいいんです(笑)。

02.どう見られるかではなく“どう見せるか”


ー 相手によってコーディネートを変えられますか?

河合 僕は花の仕事をしているので、正直スーツを着なくてもいいんですよ。でもスーツは、自分をプレゼンテーションするいいツールだと思っています。よく“花屋=カジュアル”といったイメージを持たれるんですけど、僕はちょっとした打ち合わせに出かけるときでもスーツを着用していくので、みなさんびっくりするんですよ。フラワーコーディネーターがなんでスーツ着ているの? というような感じで(笑)。

松本 僕は相手(クライアント)によってコーディネートを変えています。例えば、感度の高いアパレルの方と商談をする場合、見られる前提の着こなしで臨みます。自分がどう見られるかではなく、自分をどう見せるかが大事だと思っています。河合さんのお話じゃないですけど、ロンドンにダミアン・ハーストという現代美術作家がいて、彼もメディアに出るときはスーツを着ているんですよ。アメリカの現代美術作家ジェフ・クーンズもそうですね。アーティストってスーツのイメージがないですけど、彼らは必ずと言っていいほどスーツを着ているんですよね。

ー 着こなしの参考にしている方はいらっしゃいますか?

松本 格好いいなと思う方は大勢いらっしゃいますよ。ただ、僕はそのときの気分でいろいろな要素をミックスするのが好きなので、正直この人だ! という方はいないんですよね。強いて言うなら初期007のショーン・コネリーのスタイルが好きですね。でもブリティッシュオンリーではなくて、イタリアクラシコ的な着こなしも好きですし、フレンチに振ることもあります。行ったり来たりですよ(笑)。自分が特定のジャンルに属していたら、たくさんの師匠(参考にする人物)がいると思うんですけどね。

03.能動的にスーツを選ぶ時代になった。


ー 昨今の(日本の)テーラードスタイルについては、どう思われますか?

松本 やっとポジティブな選択ができる洋服になってきたという印象ですね。昔は、誰もが同じようなビジネススーツを着ていましたし、どこか“着せられている感”があったような気がします

河合 時代が変わって、スーツを楽しめるようになってきてるんですよね。

松本 最近はスーツを着なくてもいい会社が多いじゃないですか? でもそんな中で、わざわざスーツを選ぶということは、非常にポジティブなことだと思うんですよ。能動的に選んでいるというか、自分の好きなもの(スーツ)を選べる時代になったんですよね。

河合 「ジャパニーズダンディ」に出ている方たちは、心からスーツを楽しんでいる方たちです。松本さんがおっしゃるように能動的にスーツを選んでいる方たちなんですよね。だってこの写真集に出ている人が、130人全員ダークスーツだったらつまらないじゃない(笑)。先ほども話ましたが、テーラードはいろいろと大変ですよ。でも、そこに楽しみを見出して、いろんな着こなしにチャレンジするのがおもしろい。長い人生の中で、そういうものを着る時間があってもいいと思いますね。

松本 僕はドレスアップして出かけられる場所がもっと増えたらいいなと思います。良いスーツを持っていても、着ていく場が海外に比べて圧倒的に少ないですよね。それこそ、テーラード好きの人だけに限らず、友人たちがお洒落をして集まる“ジェントルマンズクラブ”のような場所やイベントがあったらいいのになあと思います。日本人は、あまりそういったソーシャルなパーティーが好きではないんでしょうか?

河合 前回のインタビュー(Vol.02)でお話した横浜のテーラーで行っているイベントは、まさにそれですよ! みんなでお酒を飲みながら映画を観て、テーラードの話をしています。映画を見ながら「この靴の作りは〇〇だ」とか「このシャツの破れる感じはシルクが入っている」とか、興味のない方が聞いたらなんのことかさっぱりだと思いますけど、いい大人がそんなことを真剣に語っていておもしろいでしょう? 次回は松本さんも如何ですか(笑)。

PROFILE プロフィール

PROFILEプロフィール

松本知彦 ー TOMOHIKO MATSUMOTO株式会社dig代表・クリエイティブディレクター

1963年、東京都・新宿生まれ。株式会社dig代表・クリエイティブディレクター。1986年、武蔵野美術大学造形学部卒業後、大日本印刷株式会社に入社。1997年、大日本印刷株式会社を退社。同年、株式会社digを設立。企業のブランドコンサルティングを中心に、WEBサイトの構築やシステム開発、紙媒体の制作などを行っている。
Official Site:http://www.dig.co.jp/

GUEST対談ゲスト

河合正人 ー Masato Kawai

1958年、京都生まれ。フラワーコーディネーター、ファッションプロデューサー。1986年、河合正人花事務所を設立。広告、雑誌、イベントでの制作を中心に活動。フラワーコーディネートで農林大臣賞を受賞、その他受賞歴多数。1994年、写真集『FLOWERS』を出版。2012年に、大川直人氏と2冊目となる『FLOWERS』を出版。

河合正人氏がプロデュース&ディレクションを務める
『JAPANESE DANDY』写真 大川直人
「第46回講談社文化出版賞」にノミネート。10代~90代まで、第一線で活躍している日本人、時代をつくった男たち、130人の男の肖像を撮り下ろし。写真で語る、魅せる男の「ダンディズム」。テーラードスタイル好きの女性も必見!
Official Sitehttp://japanesedandy.com/


SPECIAL INTERVIEW ARCHIVES