信頼する人に愛されるために ジャパンメイドの付加価値

Vol.06 小山薫堂 KUNDO KOYAMA 放送作家・脚本家 PHOTO:NAOAKI WATANABE(depo)、TEXT:HIROMI HARA(dig)


今回のゲストは、斬新な視点をもってさまざま企画を生み出し続ける放送作家・脚本家の小山薫堂氏。日本をテーマにした多くのプロジェクトに携わる同氏に、メイドインジャパンの魅力について改めて伺った。対談のお相手は、写真集『JAPANESE DANDY』のプロデューサー・河合正人氏。

01.すべての工程にこだわりを持った職人さんがいる。


ー 『J∞QUALITY』について聞かせてください。

小山 『J∞QUALITY』とは従来のMADE IN JAPANを超えて織り・編み、染色整理加工、縫製、企画・販売、そのすべてを日本国内で行った商品のみに与えられる統一ブランドです。日本は世界的に見ても非常に高い生産技術を持っていますし、すべての工程にこだわりを持った職人さんたちがいらっしゃいます。しかし、それが国内の消費者に伝わっていないんですよね。僕の役目は、そういった職人さんたちの声や想いを消費者へ伝えていくサポーターもしくは翻訳者といったところでしょうか。将来的には「この服の縫製は〇〇工場でやっているからほしい!」というように、洋服を生産背景で選べるようになったら素敵だなと思っています。
※J∞QUALITY:一般社団法人日本ファッション産業協議会が主体となって行う認証事業。2015年3月に株式会社レナウンおよび株式会社ダーバン宮崎ソーイングが企業認証を取得。続く7月にはスーツ、ジャケット、スラックス等、2015年秋冬商品の商品認証を取得した。

02.“服育”という言葉があってもいい。


ー ダーバンはメイドインジャパンに強いこだわりを持つブランドです。薫堂さんなら日本製のスーツにどのように付加価値を付けますか?

小山 ブランディングやマーケティング戦略は重要ですが、一番手っ取り早いのは“信頼する人に愛される”ということだと思います。「日本製っていいんだよ」と謳うよりも、熱狂的なファンがダーバンのスーツが自分にとって最良の一着なんだと支持することが大切ですよね。サントリーのウイスキーに似ていて、当時「日本製のウイスキーは良い!」と一生懸命謳ったと思うんですけど、なかなか浸透せず、マニアの中で少しずつ理解されていったんですよね。ただ、針で穴をあけるように、そこを突破して評価を得るということが重要で、ウイスキーの場合はコンペディションで1位を取ったことが評価に繋がったんですよね。洋服の場合は、やはりファンがブランドのスーツやデザイナーを支持することが一番です。そこに日本製という付加価値が付いてきて「日本製ってこんなに魅力があるんだ!」と他にも広がっていくんだと思います。

ー 既存で着用されている方にレコメンドしてもらうということですね?

小山 そうですね。あと“食育”という言葉ができて間もなく、食を通して親子が結びついたり、食のことを改めてみんなが考えるようになった気がするんですけど、そういった意味では“服育”のような言葉を作ってもいいかなと思いました。これは洋服を軸にして、いろんなことを考えるきっかけにするということですね。なぜスーツがこんなカタチになっているんだろう? と紐解いていくと、さまざまな歴史があって、そこから世界の情勢みたいなものが見えてくるかもしれませんし。

河合 そうです。洋服が何かを考えるきっかけになることは素敵なことですね。洋服をきっかけに人と人が結びついたり、洋服の基本を覚えることで、着る楽しみも広がります。いわゆるビジネスマンの方がユニフォームとして着るスーツからステップアップした楽しみで着るスーツが増えていったらいいですよね。

03.愛着を込めてスーツを誂える。


ー 最近元気がないと言われているテーラード(アパレル)業界についてはどう思われますか?

小山 昨今、すべてが簡単というか手軽になっていますよね。一番わかりやすいのが写真で、昔は撮影したフィルムを出して、実際の写真が上がってくるまで待っていましたが、今は撮影したらすぐに確認できますし、気に入らなかったら撮り直すこともできますよね。だから何回も撮ってしまうんですよ。それは洋服にも言えることだと思うんです。手軽なファッションスタイルが主流になりつつある今、それに疑問を感じている人も多いはずです。やはり、愛着を込めてシャツを仕立てたり、スーツを誂える喜びは、今絶対に求められていることだと思いますし、またそういう時代になっていくんじゃないでしょうか。

河合 昨年公開された映画『ザ・トゥルー・コスト~ファストファッション 真の代償~』で、大量生産・大量消費について触れていましたが、そういった光景を目の当たりにすると、もっともっと服を大事にしようという気になりますよね。これは僕が『ジャパニーズダンディ』を出した理由のひとつでもあるんですよ。

ー 薫堂さんご自身も出演されていますが、『ジャパニーズダンディ』をご覧になった感想を教えてください。

小山 日本には、こんなに格好いい大人がたくさんいるんだということに感激しました。あと、歳をとることの格好よさと言うか、勇気に繋がるエールをいただきましたね。

河合 ありがとうございます。ジャパニーズダンディにはいろいろな想いが詰まっておりまして、若い方に向けてきちんとした洋服を一着持ってほしいという想いや、タイドアップすることで洋服の楽しみ方が広がるということも伝えたかったんですよね。あと、先日からロンドンのサヴィル・ロウで最も歴史の古いテーラー『ヘンリー・プール』でジャパニーズダンディの販売がはじまったんですよ。140年間洋服を着続けた現在の日本人の姿を英国のジェントルマンたちにもぜひ見ていただきたいですね。

小山 それはすごいことですね。そういえば9月(2015年)に『J∞QUALITY』のキャンペーンで、湿板写真で撮影する企画をやったんですけど、あれは『ジャパニーズダンディ』がお手本です(笑)。

河合 そうおっしゃっていただけると非常にありがたいです。湿板写真見せていただきましたけど、みなさん素敵でしたよ!

ー 最後に、スーツの着こなしについてお聞かせいただけますか?

小山 僕の場合、毎日スーツを着ているわけではないのですが、やはり一緒にいる人を不快にさせないために、マナーとして着ることが多いですね。スーツは、自分の体型に合ったもので、袖を通したときに自然体でいられるものを選ぶようにしています。

PROFILE プロフィール

PROFILEプロフィール

小山薫堂 ー KUNDO KOYAMA放送作家・脚本家

1964年、熊本県生まれ。N35inc代表、オレンジ・アンド・パートナーズ代表取締役、下鴨茶寮主人、東北芸術工科大学企画構想学科長。日本大学芸術学部在籍中に放送作家として活動開始。『料理の鉄人』『カノッサの屈辱』等、斬新なテレビ番組を数多く企画。初脚本となる映画『おくりびと』では第81回米アカデミー賞外国語部門賞獲得。熊本県の人気キャラクター『くまもん』の生みの親としても知られる。その他、書籍・雑誌での執筆、ラジオ番組の出演、企業コンサル、地域活性キャンペーン、飲食店プロデュースなど、幅広い分野で活躍している。

GUEST対談ゲスト

河合正人 ー Masato Kawai

1958年、京都生まれ。フラワーコーディネーター、ファッションプロデューサー。1986年、河合正人花事務所を設立。広告、雑誌、イベントでの制作を中心に活動。フラワーコーディネートで農林大臣賞を受賞、その他受賞歴多数。1994年、写真集『FLOWERS』を出版。2012年に、大川直人氏と2冊目となる『FLOWERS』を出版。

河合正人氏がプロデュース&ディレクションを務める
『JAPANESE DANDY』写真 大川直人
「第46回講談社文化出版賞」にノミネート。10代~90代まで、第一線で活躍している日本人、時代をつくった男たち、130人の男の肖像を撮り下ろし。写真で語る、魅せる男の「ダンディズム」。テーラードスタイル好きの女性も必見!
Official Sitehttp://japanesedandy.com/


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