そこにあるのは大人の余裕 イタリア紳士の美学

Vol.09 加賀健二 KENJI KAGA セブンフォールド代表取締役 PHOTO:NAOAKI WATANABE(depo)、TEXT:HIROMI HARA(dig)


フィレンツェの名店『タイ・ユア・タイ』の元代表であり、現在は本物のクラシコ・イタリアを表現する職人たちによるハンドメイドタイブランド『セブンフォールド』を手掛ける加賀健二氏。イタリアでも屈指の存在である同氏と写真集『ジャパニーズダンディ』の仕掛け人・河合正人氏の対談が実現した。

01.媚びずに正直に着ている人は格好いい。


ー はじめに河合さんに質問です。写真集『ジャパニーズダンディ』のモデルとして加賀さんを起用した経緯を教えてください。

河合 「ジャパニーズダンディ」では、系統の異なるさまざまなスーツスタイルを紹介しています。その中でイタリアンテイストの着こなしが上手な方にも登場いただきたく、加賀さんにオファーをしました。イタリアの文化やファッションに精通していますし、人物的にも好きだったので。

ー 加賀さんの着こなしの魅力はどんなところだと思いますか?

河合 加賀さんにしかできない着こなしがありますよね。イタリアにずっと行かれているということもあって、多分日本にいるだけの感覚ではないんだなと思います。細かくは言えないんだけど、ネクタイの小剣が長いという話だけではなくてね(笑)。

加賀 僕は大阪の人間なので、どうしても自分をブランドとしてプロデュースしなくてはという感覚があるんですよね。そういう部分では少しずれてますよね(笑)。

ー 加賀さんは写真集をご覧になっていかがでしたか?

加賀 僕はこういった写真集が世に出たことがうれしいです。スーツスタイルをしっかりと撮影した正統派の写真集って今までにありそうでなかったんですよね。それもジェネラル(総合的)で偏りがないっていうところが素晴らしい。当然不公平感は出てくると思いますが、それが逆にいいところであって。

河合 そこを褒めてもらえるとうれしいですね。だいたいこういった企画ってどこかしらに人選の偏りがあるって言われたりしますからね。

ー 加賀さんが考えるダンディな男性像について教えていただけますか?

加賀 着こなしでいうと、媚びずに正直に着ている方。メンタルな部分でいうと、何事も正面からきちっと受け止められる体力を持っている方ですかね。

河合 イタリアでいう“ダンディ”は、日本と少し意味合いや感覚が異なりますよね? どんな人物を指すのか聞いてみたいですね。

加賀 洋服屋さん以外の方でもダンディな方って多いですよ。自分の身体に合った洋服をきちっと着ていますし、まずドレスコードのミスがない。あえて外してくる人はいますけど、そこに偶然はなくすべて計算です。それについては、我々日本人は2歩も3歩も遅れているのかなと思いますね。彼らは自分が一番だと思って生きていますし、そのひけらかす感じがいいんですよ。「僕はたくさんいいものを着ていて、スーツは毎回オーダーです。趣味は絵画収集で、夏は海に行ってボートに乗っています」って言っても嫌味にならないですからね(笑)。

ー なるほど。彼らはふるまいや所作もジェントルマンですよね。

加賀 そうですね。一番顕著に表れるのは食事やお酒の飲み方ですよね。相手のペースを見ながら対応してくれます。お腹が空いているからといって自分だけ先に食べてしまうとかまずないですし、相手に対して「何か不足しているものはないか?」って必ずと言っていいほど尋ねてくれますよね。あと、以前貴族の友人の家に遊びにいったことがあるんですけど、その時に思ったのが距離のとり方がものすごく上手だということ。人に不快な想いをさせず、もてなされる側がわかりやすく気を使ってもらえるんです。

ー 加賀さんの古くからのご友人である『タイ・ユア・タイ』の創業者フランコ・ミヌッチ氏もジェントルマンな逸話がたくさんありますよね?

加賀 フランコさんはとてもナチュラルで思いやりがあるジェントルマンですね。朝食を一緒に食べたときの話なんですけど、まず待ち合わせの30分前に来ていて、すでに朝食を済ませていたにも関わらず、食べていないフリをして、僕に合わせて食事をしてくれたことがありました。そういう気の使い方ができる方です。

02.イタリア人は、自分が一番格好いいと言いきる。


ー 我々日本人がイタリア人に見習うべきことを教えてください。

加賀 イタリア人は何はともあれ、どんな格好をしていても自分が一番格好いいって言いきりますよね(笑)。自分の意見をしっかり述べるという姿勢は大事で、日本人に一番足りないことですよね。

河合 本当はそう思ってなくても言いきるんでしょ?(笑)。

加賀 言いきりますね。自信がないなんてありえないですから。

河合 自信があるように見せることが、本当の自信に繋がるってこともあるからね。

加賀 昔、知り合いのイタリア人に聞いたことがあるんですよ。「なんでそんなこと言うの?」って、そうしたら言うのはタダでしょって(笑)。イタリアでは何でも意見を言うことが大切で、意見を言わないとすべてを認めてしまったということになるんです。いいことも悪いことも返事をしないとまったく受け入れてもらえない国ですからね。イタリアでは、自分が何者かっていうことをわかりやすく相手に伝えないことには、何も始まらないんです。

河合 昔から日本人は協調性っていうのを大事にするけど、いい意味でも悪い意味でも暗黙の了解でやってしまうから、悪く出たときに意見がない奴みたいになってしまうんだよね。

03.何事も余裕をもって臨むべき。


ー 異性からの視線を気にする男性は少なくないと思います。加賀さん・河合さんは、見られる立場として気を付けていることってありますか?

加賀 バタバタしないことですよね(笑)。例えば、慌てて電車に乗り込むっていうのは止めたほうがいい気がします。時間に余裕をもって穏やかに乗り込めるかどうかですよね。女性目線でいうとリアリティがありすぎて嫌だと思いますよ。男前の方が全力で走ってきて、汗ダラダラでふうふう言ってる姿を見るとちょっとがっかりしてしまうかなと。1本前の電車に乗る=余裕のある環境を作る、ということが大事だと思いますね。

河合 精神的なゆとりが必要ってことだよね。1本前の電車に乗るならば、当然今までより前倒しで朝起きるわけじゃない? そうすると身づくろいの時間が出てくるわけで、その時間をしっかりとれるかが大事。それをせずに出ちゃうからアタフタしてしまって見栄えにも反映されてしまう。

加賀 女性をどうリスペクトするかっていう部分でいうと、たまには優しい言葉をかけてあげるくらいの余裕はほしいですよね。やはり思いやりってとても大事なんですよ。

河合 加賀さんはね、女性だけじゃなくて僕のことも褒めてくれるんですよ。異性だけではなく、いつも人に対するリスペクトがある人。人間的に素敵だなあと思うんですよ。

PROFILE プロフィール

PROFILEプロフィール

加賀健二 ー KENJI KAGAセブンフォールド代表取締役

1964年・大阪生まれ。イタリアで1984年に誕生した老舗セレクトショップ『タイ・ユア・タイ』の代表を経て、現在はセッテピエゲで有名であったフィレンツェの伝統的なハンドメイドタイ工房に日本資本を投じて発足された『セブンフォールド』社の代表取締役を務める。

GUEST対談ゲスト

河合正人 ー Masato Kawai

1958年、京都生まれ。フラワーコーディネーター、ファッションプロデューサー。1986年、河合正人花事務所を設立。広告、雑誌、イベントでの制作を中心に活動。フラワーコーディネートで農林大臣賞を受賞、その他受賞歴多数。1994年、写真集『FLOWERS』を出版。2012年に、大川直人氏と2冊目となる『FLOWERS』を出版。

河合正人氏がプロデュース&ディレクションを務める
『JAPANESE DANDY』写真 大川直人
「第46回講談社文化出版賞」にノミネート。10代~90代まで、第一線で活躍している日本人、時代をつくった男たち、130人の男の肖像を撮り下ろし。写真で語る、魅せる男の「ダンディズム」。テーラードスタイル好きの女性も必見!
Official Sitehttp://japanesedandy.com/


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