根底にあるのは色気とユーモア スタイリスト森岡弘の視点

Vol.11 森岡弘 HIROSHI MORIOKA ファッションディレクター・スタイリスト PHOTO:NAOAKI WATANABE(depo)、TEXT:HIROMI HARA(dig)、SPECIAL THANKS:Fireking cafe


今回のゲストはファッション誌でのスタイリングをはじめ、政治家のイメージコンサルティング、航空会社の制服デザインなど、ファッションというフィルターを通してさまざまなフィールドで活躍する森岡弘氏。対談のお相手に『ジャパニーズダンディ』の河合正人氏を迎え、テーラードについて語ってもらった。

01.センスの良い男は引き算ができる。


ー 森岡さんは、モデルとして『ジャパニーズダンディ』に出演されていますが、実際に写真集をご覧になっていかがでしたか?

森岡 僕も以前『メンズクラブ』で編集の仕事をしていたので、作り手の大変さはよくわかります。この写真集を仕上げるには、相当なご苦労があったと思いますよ。本当によく仕上げられたというか、よく最後までやり通されたなと思いました。クオリティの高さはもちろんですけど、熱い想いが伝わってきました。時間もかかれば、モデルをキャスティングする苦労もある、その中でコンセプトを崩さずに仕上げるということは大変なことだと思います。本当にご苦労様でしたと言いたいです。

河合 ありがとうございます。そうおっしゃっていただけると非常に光栄です。制作には2年半かかりましたが、森岡さんをはじめ、皆様のご協力があって完成したものだと思っています。

ー 写真集のタイトルにもなっていますが、森岡さんが想う“ダンディ”な男性像を教えてください。

森岡 遊び心がある方や男性としての意識が高い方、自分のスタイルを持ってる方ですかね。よくセンスの良い方とお洒落な方は別ものと言いますが、まさにその通りで、センスの良い方は、どんな着こなしをしてもその人らしさが表れる。お洒落な方っていうのは、トレンドを踏まえながらファッションを楽しんでいる方ですよね。ですから、ある意味お洒落な方って足し算だと思うんですよ。似合う似合わないは別として、パリやミラノの流行を敏感に取り入れて、いろんなものを着ていますし、それを楽しむことがそういった方々の主であって。でもセンスの良い方っていうのは、そこで自分流にディレクションをしたり、自分流にこなしてしまうんですよね。ファッションに負けていないというか、自分のキャラクターを含めて、似合うものとそうでないものを理解している。だから足し算だけではなく、引き算もできるんですよね。

河合 お洒落は外見だけですが、センスが良いということは、洋服だけではなく、ライフスタイル全般が洗練されている方を指すんでしょうね。

森岡 それはありますね。今の時代はセンスの良い時代だと思いますよ。

02.洒落者はドレスコード違反ギリギリで遊ぶ。


ー 森岡さんが『メンズクラブ』でエディターをされていた時代と現在ではテーラードスタイルの傾向も大きく変わってきてますよね?

森岡 着こなしの幅は広がってますよね。僕が『メンズクラブ』にいた頃はTPOがとても重視されていました。でも、歴史上の洒落者を見てみると、だいたいの方って掟破りなんですよね(笑)。ドレスコードに準じることは、正しいことですし間違いないですけど、着こなしでいうと平均点になってしまう。お洒落な方っていうのは、ドレスコード違反ギリギリのところで遊ばれるんですよ。グレーゾーンがあって、格好いいのか格好悪いのかわからない、正しいのか正しくないのかわからない、そんな微妙な加減です。そういうところが男の服の面白さだと思うんですけどね。例えば、スーツにスニーカーを合わせることだって普通ではないんですけど、河合さんが今日のスーツに合わせていたらアリなのかもしれない。そこは非常にグレーなんですけど、この人ならアリかもって思わせたら勝ちですよね(笑)。時代の流れもあると思いますが、そういったスーツの着こなし方という部分は昔に比べて圧倒的に広がっていると感じています。

河合 恐らく男のテーラードスタイルというのは、あるルールに則って表現していくんですけど、いつも微妙なせめぎ合いなんですよね。ここまでは許されるとか、許されないとか。

森岡 僕はスタイリングをするときに、スーツとシャツとネクタイがあったら、どれかひとつを柄にして、他のふたつは無地にしてくださいと言います。この方式でいくとだいたい何でも合うんですよ。ところが慣れてくると、これでは物足りなくなり、柄を2つにしたくなるんですよね。そうすると今度はハーモニーが必要になるんですよ。さらにわかってくると柄を3つにしたくなるんです。そうするとやはり整わせ難くくなりますよね。でもそこで「整っていないけどあの人が着るとなんか格好いいんだよな」って思わせるのが醍醐味なんです。お洒落な方をよく見てみるとこのコーディネート本当にアリなの? という格好をしている場合が多いんです。けれども実際その人が着て格好良く見えたらしてやったりなんですよ(笑)。格好良く見せるかどうかはその人の奥行きなので、センスの良い人は上手く見せるんですよね。

河合 そういう方も昔はさんざん悩んでいるはずで、それを経てですよね(笑)。もちろん年齢や経験値もあるんでしょうけど。

森岡 面白いもので、やはりある程度の年齢にいかないと似合わないスーツもあるんですよ。例えばダブルのスーツも年齢を重ねている人が着ると収まりがいいんですけど、フレッシュマンが着ていたらおかしいと思います。あと、ある程度のキャリアを積んでいて自信がある方は、コーディネートの落としどころも弁えているから、ひとつハズしたらひとつ足して差引をゼロにするというテクニックを持ち合わせているんでよね。上も下もどこもかしこもハズしてしまうと悪目立ちしてしまいますから。

河合 たしか以前お会いしたときに、モデルさんには足し算、一般の方には引き算とおっしゃってましたよね?

森岡 その通りです。モデルは流行の洋服を綺麗に着こなすために日々身体を鍛え感性を磨いています。なので眼鏡を掛けさせても、帽子を被らせても、全部絵になりますよ。ただそうでない一般の方をモデルのようにスタイリングしたら大変なことになってしまいます(笑)。だからビギナーの方にスーツのお話するときは、入口の話しかしないんですよ。例えば、河合さんをスタイリングするとなったら、もう十分洋服のことをわかってらっしゃるから、基本言うことなんてないんです。そういう意味では、奥行きとか引き出しの多さというのは、経験値と比例しているんですよね。

河合 僕のベースはアイビーなんですけど、良いも悪いもそのベースがあるおかげで、最低限人前に出て恥ずかしくない格好を覚えることできたと思っているんですよ。今でもそこから抜け出せずに縛り込まれている方もいらっしゃいますけど、そこから抜け出してお洒落を楽しんでいる方っていうのは、しっかりとしたベースがあるから、ある程度ハズしていてもおかしく見えないんですよね。

森岡 先ほども言いましたが、柄をひとつに絞れば大抵どこに行っても大丈夫です。でも格好いいかっていうとそうとは限らない。でも面白いもので、わかっている方が着ると柄ひとつでもぜんぜん違って見えます。同じ格好でも、崩すことが出来る人と崩れている人は、崩れている本人は気がつかなくても、まわりの人は着こなしのおかしさに気がつくのです。

03.自身の色は、色気とユーモア。


ー ご自身のスタイリングのルールを教えてください。

森岡 常に持っているのは色気とユーモアです。色気は時代の気分によって変わります。シャツのボタンを3つも4つも外してワイルドな男性感を演出するだけではなく、シャツのボタンを首元まで留め肌を隠して色気を演出するテクニックもあるんですよ。だから着方によりますがスーツは究極に色っぽいアイテムだと僕は思っています。わかっていない方は過度な装飾をしてしまったり、やりすぎてしまう傾向にあるんですけど、そうすると色っぽさは減少してしまいます。人物像のトレンドは今はジェンダーレスが主流になっていますが、セクシー感に関しては、基本的には男は男らしく、女は女らしくっていうのが僕のベースなんです。もちろんお仕事でさまざまな方向性の提案をさせていただきますが、森岡の色と聞かれれば色気とユーモアですね。

PROFILE プロフィール

PROFILEプロフィール

森岡弘 ー HIROSHI MORIOKAファッションディレクター・スタイリスト

1958年・大阪生まれ。早稲田大学教育学部卒業。男性ファッション誌『メンズクラブ』編集部にて、ファッションエディターとして活躍後、独立。1996年にクリエイティブオフィス『株式会社グローブ』を設立。ファッションを中心に活動の幅を広げ、現在は俳優やミュージシャン、アスリート、文化人などのスタイリングを行う他、イベントやショップのコスチューム、企業のユニフォームデザインなども手掛けている。

GUEST対談ゲスト

河合正人 ー Masato Kawai

1958年、京都生まれ。フラワーコーディネーター、ファッションプロデューサー。1986年、河合正人花事務所を設立。広告、雑誌、イベントでの制作を中心に活動。フラワーコーディネートで農林大臣賞を受賞、その他受賞歴多数。1994年、写真集『FLOWERS』を出版。2012年に、大川直人氏と2冊目となる『FLOWERS』を出版。

河合正人氏がプロデュース&ディレクションを務める
『JAPANESE DANDY』写真 大川直人
「第46回講談社文化出版賞」にノミネート。10代~90代まで、第一線で活躍している日本人、時代をつくった男たち、130人の男の肖像を撮り下ろし。写真で語る、魅せる男の「ダンディズム」。テーラードスタイル好きの女性も必見!
Official Sitehttp://japanesedandy.com/


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