着こなすことで

Vol.12 森岡弘 HIROSHI MORIOKA ファッションディレクター・スタイリスト PHOTO:NAOAKI WATANABE(depo)、TEXT:HIROMI HARA(dig)、SPECIAL THANKS:Fireking cafe


今回のゲストはファッション誌でのスタイリングをはじめ、政治家のイメージコンサルティング、航空会社の制服デザインなど、ファッションというフィルターを通してさまざまなフィールドで活躍する森岡弘氏。対談のお相手に『ジャパニーズダンディ』の河合正人氏を迎え、テーラードについて語ってもらった。

01.ビジネスシーンでお洒落をする必要はない!?


ー ビジネスシーンでの正しいスーツの着方を教えてください。

森岡 大事なのは相手を嫌な気持ちにさせないこと。もっと言ってしまえば、仕事ができる男性というのは、相手に安心感や信頼感を与える正しい着方ができる方だと思うんですよ。ですから、ビジネスシーンでお洒落に見せるということは、もしかすると正しくはないのかもしれませんね。

河合 たしかにビジネスシーンではお洒落である必要はないって言い方をする方もいらっしゃいますよね。

森岡 以前出版社に勤めていた頃、編集者になる前に営業をやっていたことがあるんですよ。でも出版社の営業職になったにも関わらず、ファッションが楽しくて毎日派手な格好をしていると上司に「そんな格好をしている暇があったら、もう一件クライアント回ってこい!」なんて言われましたね(笑)。当時はファッションに現を抜かしているように見えたんでしょうね。ですからお洒落かどうかは考え方の問題になりますが、一番大事なことは、やはり仕事着なので一緒に仕事をさせていただく方に対して“この人に案件を任せておけば安心してパートナーになれる”と思わせるような着こなしを意識することだと思います。とくに今の時代はセンシティブなので“間違いがない人”や“信頼できる人”、そういったキーワードが立った着こなしでなくてはならないですよね。

02.洋服に気持ちを込めないのは勿体ない。


ー 森岡さんのスタイリングは、ベーシックながらユーモアのあることで知られていますが、スーツスタイルをワンランクアップさせるためのアイデアやテクニックを教えてください。

森岡 まずは色を変えることですよね。スーツの概念ってビジネスマンだと、基本はネイビーかグレーじゃないですか? 例えばそれをベージュに置き換えるだけでもだいぶ違って見えます。柄を取り入れてみたり、シルエットを変えてみるのもひとつの方法ですよね。最近はチェック柄のビジネススーツもあります。昔はNGだったんですけど、そういったずらしのようなものを入れておくと違和感なく個性を主張できます。正直、劇的に変えるのはあまりおすすめできません。年齢にもよりますが、若い方を変えるのはありだと思いますけど、ある程度年齢のいった方を劇的に変えるのはいい結果を残さないですよね。それよりふとした瞬間に「あの人ってあんな格好してたっけ?」って思わせられれば勝ちのような気がします(笑)。例えば、僕がスタイリングを担当したAさんというタレントに対して周囲の人間が「あの人最近すごく素敵になったよね」って言ってくれたら100%の仕事ができたなと思います。人の着こなしを変えるのはそんなに難しくないんですけど、その人のものにならないと意味がないんです。ある程度時間をかけて本人も納得しながらゆっくりと自分のものにしていくと、スーツはその人の力になると思いますね。

河合 やはりそこは本人の意識が働かないと変わってはいかないですよね? 意識を持って自分も楽しめるようになれば自然と自分なりのスタイルが確立されていくのではないでしょうか。

森岡 洋服(スーツ)はその人のことをサポートしてくれる強力なサポートメンバーだと思うんですよ。着こなしを整えることで確実に楽しくなりますし、気分も上がる。そうするとおもしろいもので人に会いたくなって外に出たくなるんですよ。自信が付けば異性にも会いたくなる。結果自分の人生や生活までも変えてしまうんです。

河合 好循環していくんですよね。『ジャパニーズダンディ』に出ている方がなぜ格好いいかというと、テーラードを装うことが好きで、そういう自分のこともどこか好きだから(笑?)好循環するんですよね。その逆のパターンを考えたときに、装うことに自信がないと外側に対してに打ち出したくなくなってしまい、他人の目を気にしなくなってしまう。洋服というのは着こなし方ひとつで自分の印象を大きく左右するものです。一方で着方次第でいい方向に向く力を持っているということです。

森岡 認められたいとか、評価されたいという想いが自信に繋がるんですよね。それは仕事でもそうですし、スポーツでもそう。洋服にも同じ作用があって、認めてもらえるとうれしいものなんです。洋服というのは、自分をプレゼンする上で、一番コストパフォーマンスの良いツールだと思うんですよ。例えば、英語を覚えると行動範囲が広がりますよね? でもそこには時間とお金が物凄くかかります。その分、洋服は着替えたら終わりです。誰にだってすぐにできることなので、洋服に気持ちを込めないのは勿体ない。だってだらしなく見える人とときちんとした格好の人がいたら、きちんとした格好の人に仕事を任せたいじゃないですか? 着こなしひとつで差ができてしまうので、気持ちを込めてスーツを着て自分をプレゼンしてほしいと思いますね。

PROFILE プロフィール

PROFILEプロフィール

森岡弘 ー HIROSHI MORIOKAファッションディレクター・スタイリスト

1958年・大阪生まれ。早稲田大学教育学部卒業。男性ファッション誌『メンズクラブ』編集部にて、ファッションエディターとして活躍後、独立。1996年にクリエイティブオフィス『株式会社グローブ』を設立。ファッションを中心に活動の幅を広げ、現在は俳優やミュージシャン、アスリート、文化人などのスタイリングを行う他、イベントやショップのコスチューム、企業のユニフォームデザインなども手掛けている。

GUEST対談ゲスト

河合正人 ー Masato Kawai

1958年、京都生まれ。フラワーコーディネーター、ファッションプロデューサー。1986年、河合正人花事務所を設立。広告、雑誌、イベントでの制作を中心に活動。フラワーコーディネートで農林大臣賞を受賞、その他受賞歴多数。1994年、写真集『FLOWERS』を出版。2012年に、大川直人氏と2冊目となる『FLOWERS』を出版。

河合正人氏がプロデュース&ディレクションを務める
『JAPANESE DANDY』写真 大川直人
「第46回講談社文化出版賞」にノミネート。10代~90代まで、第一線で活躍している日本人、時代をつくった男たち、130人の男の肖像を撮り下ろし。写真で語る、魅せる男の「ダンディズム」。テーラードスタイル好きの女性も必見!
Official Sitehttp://japanesedandy.com/


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