ここが、最後の砦 至高の「レナウン品質」が手に届くまで

Vol.21 株式会社レナウンアパレル科学研究所 
RENOWN APPAREL INSTITUTE INCORPORATED 株式会社レナウンアパレル科学研究所 PHOTO:NAOAKI WATANABE , TEXT:YURIKO KISHI


1970年のブランド創設以来、「最高の品質の洋服を作る」というモノづくりの精神を遵守し、いつの時代も大人の男性に愛されるスーツを生み出してきたダーバン。その至高の品質を具現化するために、業界最高水準の検査項目に基づき、繊維製品の品質試験や判定を行っているのが、株式会社レナウンアパレル科学研究所(以下、アパ研)。ダーバンをはじめとするレナウン製品は、原則としてすべてここを通り、厳重な試験に合格し、品質判定を受けたものだけが商品化されていく。顧客が満足できる「レナウン品質」は、いかにして達成されるのか?品質評価のエキスパートが集結する同社を訪ねた。

01.レナウン品質は、「今、お客様が求めているか」がすべて


今年で創業115年を迎えたレナウン。その歴史において、家庭用品品質表示法と、不当景品類及び不当表示防止法が制定された1962年(昭和37年)は、特筆すべき年の一つ。アパ研の前身であるレナウン綜合試験所が設立された年だ。モノづくりをするだけでなく、作ったモノの品質を自ら厳重にチェックするという品質判定システムの土台をいち早く築き始めていたのである。

アパ研は、設立の翌1999年、国際的な品質管理・品質保証システム規格「ISO9001」を取得したのち、2000年6月にはJNLA(Japan National Laboratory Accreditation system)の審査を受け、工業標準化法に基づく試験事業者として、当時の通商産業大臣(現・経済産業大臣)より認定を受けるに至った。その実績は、百貨店やGMS(総合スーパー)などのアパレル・流通業界はもちろんのこと、現在に渡って、クリーニング業者や行政機関など、多岐に渡る分野から厚い信頼を得ている。

「当社では、独自に構築した品質判定システムを基に、品質評価を行っています。平たく言うと、お客様が求めている商品、あるいは、お客様が求めている品質になっているかどうかを厳重にチェックすることが役目であり、言うなれば、私共の使命は、『レナウン品質』を実現するための最後の砦となることです。判定業務は、品質判定課、品質試験課、そして、消費者苦情分析を行うグループ、計三つのグループが連動して行っています。」

「大きく分けて、生地の段階と製品になった段階で二つの試験を行い、それを経て、合格したものに対して品質判定書を発行し、最終的に商品化します。品質判定書には、組成や機能性、取扱い表示記号など、法律的な表示事項を記載しています。それを基に脇ネームを印刷し、生産の工程に入ります。一方、不合格だった場合、その製品が世に出ることはありません。理由は至ってシンプルです。お客様が求めている製品や品質に至っていないからです」と同社代表取締役社長・藤吉一隆氏は話す。

02.究極の答えは、いつも目の前にある


ダーバンの品質管理は、株式会社レナウンダーバンホールディングスを受け皿とし、株式会社レナウンと株式会社ダーバンの3社が合併し、新社名を「株式会社レナウン」とした2006年より行っている。

「ブランドによって、お客様が求める品質基準はさまざまに違います。それゆえ、同じ基準をあてはめても、満足いただく結果を導き出すことはできません。ダーバンなら、ダーバンを購入するお客様が、今、何を求めているのか。それをしっかりと見極め、今、求められている品質基準に合っているかどうかを判断することが、私共の任務。その答えは例外なく“お客様”にあります」

長年、レナウン製品の品質管理で培ってきた経験をデータとして蓄積しているアパ研だからこそ、時代がどれだけ変わっても、顧客のニーズを的確に掴み、求められる品質を判定し、世に送り出すことができるのだ。

アパ研が他の検査機関と大きく異なる点は、消費者苦情等のあった製品や生地における経験を基に、独自に発掘した試験なども行えること。試験を行う機関は多くあるが、そこで出た結果が市場に出て、どんな答えが返ってくるかというところまで一貫して把握している機関は他にない。その答えの中には、当然ながら消費者からの苦情も含むが、それらにも真摯に対応し、改善策を生み出す術がここには揃っている。

ダーバン製品に関する試験について、自社工場である株式会社ダーバン宮崎ソーイング(以下、宮崎ソーイング)の存在も忘れてはならない。アパ研が、“消費者目線”の試験を行うのに対し、宮崎ソーイングの工場内試験室では、熟練の職人たちによる“作り手目線”の試験を行っている。

「製品を作っていく前段階で、『この生地は縫えるかどうか?』、『縫製に対応できるかどうか?』といった厳しいジャッジをします。ここまでやるのかというくらい徹底していて、感心するばかりです」

品質評価と縫製。双方のプロフェッショナルによる厳重な試験をクリアできた生地や素材だけが、やがて一着のスーツとして完成し、店頭にお目見えする。その過程で、もし直すべき箇所があれば、アパ研は正確な評価結果と共に提案し、宮崎ソーイングの職人たちと互いの智慧を持ち寄り、衣料品として世の中に出せるレベルまで完成度を高めていく。糸などの原料から製造を行う毛織物メーカーなどと、同様にタッグを組んで取り組むこともあるそうだ。

03.“生地の挙動”を分析するための特殊設備とは?


アパ研の試験室には、洗濯堅ろう度試験機や耐光堅ろう度試験機、マーチンデール形摩耗試験機など、さまざまな専門機器がズラリと並んでいる。中でも、メンズのスーツを製品化する上で欠かせない「恒温恒湿室」は、生地の挙動を確かめるために、温度と湿度を一定の間隔で変化させることができるという特殊なもの。

「温度は約30℃、湿度は90%くらいまで上げます。真夏の外環境に近い状態を作ることで、体から発する汗などの湿気によって、生地がどのように伸び縮みするかを再現します。特に、スーツに使用するウール素材は、温度や湿度によって、伸び縮みする性質が極めて特徴的。それによって、お客様が着用した際、伸びない縫い目に対し、生地だけが伸びてシワが出たりするなど、“仕立て映え”に大きな影響が出ることがあります。そうしたことを防ぐために、縫製仕様で対応するのか、あるいは、素材を改善するのかといったことも含めて、生地の挙動を見ていきます」と話すのは、試験室を案内してくださった同社メンズ品質判定課の梶田泰誠氏。

レナウンの品質データバンクとしての機能を持ち、誇りをもって品質保証を行うアパ研。後半では、レナウン品質の製品が世に出るまでに行う試験の数々を引き続き紹介する。


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