アパレル業界屈指の審美眼がジャッジする 品質の境界線

Vol.22 株式会社レナウンアパレル科学研究所 
RENOWN APPAREL INSTITUTE INCORPORATED 株式会社レナウンアパレル科学研究所 PHOTO:NAOAKI WATANABE , TEXT:YURIKO KISHI


1970年のブランド創設以来、「最高の品質の洋服を作る」というモノづくりの精神を遵守し、いつの時代も大人の男性に愛されるスーツを生み出してきたダーバン。その至高の品質を具現化するために、業界最高水準の検査項目に基づき、繊維製品の品質試験や判定を行っているのが、株式会社レナウンアパレル科学研究所(以下、アパ研)。ダーバンをはじめとするレナウン製品は、原則としてすべてここを通り、厳重な試験に合格し、品質判定を受けたものだけが商品化されていく。顧客が満足できる「レナウン品質」は、いかにして達成されるのか?品質評価のエキスパートが集結する同社を訪ねた。

01.万事徹底。最高品質を叶える試験の数々


「数ある中でも、私共がとりわけ注意を払っているのは、着用した時に破れたりしないか、こすって擦り切れたりしないかという生地の強度や物性についての試験です。この試験室では、お客様に一定水準の品質保証と法律を遵守した商品を提供するために、さまざまな試験機を使って、的確な品質評価を行っています」と話すのは、アパ研・メンズ品質判定課課長の梶田泰誠氏。

上記は、引張試験機と呼ばれる機器で“引き裂き”の試験をしている様子。上下方向からゆっくりと力をかけて、生地サンプルを引っ張り、どれくらいの強度で破れるのかを確認していく。糸1本ずつの強度のデータが、PC上のグラフチャートで数値化される仕組みだ。

摩耗の試験には、マーチンデール形摩耗試験機という機器が使われている。生地サンプルを専用の器具にセットし、約1~2万回摩擦し強度を調べる。一般に、各個人がワードローブに持つスーツの着数は限られている。「それでいて、
着用頻度は高く、着用状況も作業服なみに過酷。加えて、値が張るものが多いので、スーツ地に要求される強度は極めて高いものです」

例えば、カジュアルの場合、ジーンズの裾が擦り切れていても、ファッションとして捉えることができるし、その風合いを出すための加工を施した製品も多くある。しかし、ビジネスの場で着用するスーツのパンツにおいて、擦り切れた裾は許されない。

「特に、ストライプ柄の生地の場合、柄の部分だけが擦り切れて消失してしまうケースもあります。ここで試験した結果を基に、企画は商品開発の判断を行っていきます。正確な結果の提供なしに、正確な判断はできませんので、厳重に試験を繰り返しています」

このセクションでは、縫い目滑脱といって、製品の縫い目に力がかかったときの開き具合は大きすぎないか、縫い目の抜けがないかなどを確認する試験も行っている。

02.紫外線、色落ち、色泣き…
品質評価のすべてを抜かりなく網羅


薬品や顕微鏡などが並ぶ奥の試験室でも、さまざまな試験を行っている。上記は、紫外線オートフェードメータと呼ぶ機器で、日焼けによる生地の変色の有無を調べるためのもの。知らぬ間に、ネイビーカラーの衣類が、赤っぽい色に変色していたという経験、一度はあるのではないだろうか。ここでは、そうした光に対する変色性を調べる試験を行う。フォルダーに生地サンプルをセットし、乾いた状態の生地サンプルに人工の光を10時間ほど照射する場合もあれば、生地サンプルを人工の汗液に濡らし、光を照射する場合もある。実際、乾いた状態で光に当たった場合と汗に濡れた状態で光に当たった場合とでは、変色の具合もかなり違ってくるという。

また、綿、ポリエステル、ウール、シルクなど、生地の中にどの繊維が入っているのか、その種別や混用率などを調べる繊維鑑別・混用率試験も行っている。

「衣料品の組成表示は、生地を構成している繊維の質量割合を示しています。例えば、スーツ地によく使用するウールシルクの場合、ウールシルクが入っていることをまず確認します。その後、生地サンプルを乾燥させて水分を抜き、質量を測ります。次に、薬品でシルクだけ溶かし、今度は、残ったウールの質量を測ります。このようなプロセスを経て、それぞれの繊維の質量割合を求めます」

これらの試験結果は、洗いやアイロンの条件など、製品の取扱い表示を決めるための判断材料になる。複数の繊維が入っている生地だと、繊維鑑別だけで1週間ほどを要することもあるという。素性の分からない輸入品においては、さらに困難を極めるケースもあるらしい

パークロルエチレンと呼ばれるドライクリーニングの溶剤などを使って、変色をはじめ、色落ち、色泣きの試験も行う。有毒物質を含む薬品も取り扱うため、 作業者が影響を受けることのないよう、ドラフトチャンバー(局所排気装置)を設置し、万全の環境で業務にあたっている。

03.夏場のスーツ地は特別扱い


ICI形ピリングテスターは、摩擦などによって生地に生じる毛玉(ピリング)を発生させる評価装置。特殊ゴム管に生地サンプルを巻きつけ、コルクを内張りした試験箱の中に入れ、設定した時間回転させる。その後、発生した毛玉の状態と、元見本とを比較し、抗ピル性能の判定をする。

ビジネスパーソンにとって、夏ほど過酷な季節は他にない。灼熱の太陽の下、びっしょり汗をかいたまま、スーツ姿で外回りすることの大変さを知る人は多いだろう。だが、スーツも持ち主と同じように、疲弊することを忘れてはならない。

「濡れた状態(汗をかいた状態)で生地に摩擦が起きると、ピリングテスターでは再現できないようなピリングが発生します。これを再現するために、当社ではランダム・タンブル形試験機を使い生地サンプルを湿潤した状態で試験を行っています」

この装置は、主にスーツ地の試験に用いている。ランダムな摩擦を与え、ピリングの発生具合を調べることから、ランダムタンブルピリング試験と呼ぶ。試験は、サンプルに一定の水分を与えて行う点で、他の検査機関では通常は行っていない特殊なものだ。

年間21,000種もの生地の品質性能に対し、中立公正かつ確然たる評価・判定を行うアパ研。百貨店などの店頭で見かけた時に、どうか想い出して欲しい。その存在があってこそ、「レナウン品質」を誇るダーバン・スーツが、晴れて世の中にお目見えするということを。


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